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財政のお話し

2019.09.15

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平成30年度一般会計決算状況 数字が示す幸手市の姿

昨日、ある会合で近隣他県のまちの首長さんとお話しする機会がありました。過去にも何度かお会いしたことのある首長さんでしたが、開口一番、「幸手市の実質公債費比率はどうなっているか」とお聞きになりました。私は「幸手市はそう高くはありません。埼玉県の方針もあるのか、埼玉県の市町村は総体的に低い状況にあります。しかし、仕事をしなければ借金も増えず返すお金も少ないということもあり、低ければ良いというものでもないと思っています」と答えました。
その首長さんは然もありなんというお顔で、わが町事情をお話になり、自分が首長になってからこの実質公債費比率を下げるのに苦労したことをお話し下さいました。ほんの数分のお話しでしたが、市の財政に責任を持つ首長さんが財政運営で大事にされていることを垣間見ることができる貴重な機会でした。

さて、公債費比率は財政健全化法の指標の一つとして平成17年度から導入されました。公債費は人件費や扶助費等と同じく義務的な経費(必ず返さなければならない経費)ですので財政構造の硬直化の要因となります。一般的には10%を超えないことが望ましいとされています。

幸手市の平成30年度実質公債費比率は3.7で前年度比0.1ポイント上昇しました。因みに、私がお会いした首長さんのまちの実質公債費比率は8.8(H29)です。3.7はかなり低い数値ですが楽観はできません。例えば、下水道普及率です。まだ下水道整備の途上にある幸手市はこれから下水道事業にお金がかかります。当然起債が増え、それは将来の人が返済することになります。首長さんのまちではすでに100%整備が完了し、今はその公債費を返済している途上とか。クロス検証することで数字の意味が炙り出されますね。

上記のように財政は複雑ですが、皆さまにわが町の財政をよりご理解いただけるよう、平成30年度決算数字の中から「公債費」をテーマに解説してみたいと思います。想定以上に長くなってしまいました。数字にご関心のない方は結論に飛んでいただいても大丈夫ですのでよろしくお願いいたします。

◇まず、幸手市の平成30年度一般会計決算規模は過去最高を更新。自主財源が増えたのではなく、国庫支出金の増大や支出に合わせて市債を発行したり基金を取り崩して予算を調製した結果です。幸手市では民生費などに関する国や県の負担や駅舎整備にかかる経費が財政規模を押し上げています。
歳入決算 19,434,785千円(H29 17,999,799千円)前年度比8.0%増
歳出決算 18,581,017千円(H29 16,761,125千円)前年度比10.9%増

◇収入と支出の差である決算収支では実質単年度収支は過去最高の赤字を示しました。家計で言うと収入より出費が多く貯金取り崩し、ローンで支払っている状況ですね。平成26年度以降、平成27年度除き毎年4〜6億円前後の赤字が発生しています。

◇次に地方債発行と積立金の取り崩しについて。収入で足りない支出は借金と基金の取り崩しで賄います。地方債は借りた後、3年後から返済が発生。積立金は目的を持って積んだ基金から目的に応じて支出しますが、ともに市民の世代間の公平な負担と負担の平準化が目的です。決算では基金は底つき状態で市債は140億円を超えています。

◇改めて、公債費(借金返済)の指標は3つです。
❶公債費比率…4.4%(前年度比0.6ポイント増)
❷公債費負担率…9.9%(前年度比0.4ポイント減)
❸実質公債費比率…3.7%(前年度比0.1ポイント増)

❶公債費比率とは地方債の元利償還金(繰り上げ償還を除く)に充当された一般財源の標準財政規模に対する割合です。❷公債費負担率とは、公債費に充当された一般財源の一般財源等総額に対する割合です。❸実質公債費比率とは、一般会計の地方債元利償還金(繰り上げ償還を除く)ほか、公営企業会計の地方債元利償還金に当てられた一般会計からの繰出金など公債費に準じる支出に充当された一般財源の標準財政規模に対する割合です。
幸手市では経年を見ると全体的に公債費の割合は低くなっていますがここ数年、❷公債費負担率は上がっています。前述の首長さんが気にしていた❸実質公債費比率については一般会計予算に占めるまちのオール負債の状況です。この数字が高くなると自治体には赤信号が灯るのです。夕張市はこの数字が高くなって「財政再建団体」に転落しました。当時、幸手市もその一歩手前の黄色信号が点滅。「財政健全化計画」を作り様々な事業が見直されました。皆さまのご記憶にも残っているのではないでしょうか。

事業をすれば負債は増えますが、しかし、数字ばかりを気にして、事業を立ち上げない、やらないというのでは市民の不利益でしかありません。要するにバランスです。幸手市では、ここ数年、一気に積み上げた基金を一気に取り崩しするなどバランスを欠く財政運営で財政の厳しさに拍車がかかっています。特に駅舎整備については、東西をつなぐことは必要だが「財政力に見合った駅舎を」との市民の訴えも虚しく、私も議会では少数派として、活性化のエンジンだとする議員や市長の考えを変えるに至らず。駅舎で活性化はネットなどを見ると、若者と思しき人たちが無理だ、無駄だとつぶやいているのに、です。

二元代表制の一方にある首長としてどんな指標を重視するかはいろいろだと思いますが、お預かりした税金をいかにバランスよく市民にサービスとして還元できるか。いろいろ考えればキリのない事。市長に使命感と責任感があれば、その苦悩は24時間、365日です。首長が24時間公人、一国の主人に惰眠を貪る時間なしと言われる所以ですね。

さて、長々と書いてきましたが結論です。
誰が首長であってもやらねばならないことはやらねばならない。それを大業に「やった、やった」と評価しない。反対に、難問を突破して本当に市民のため、まちの将来のために厳しい財政を責任を持って運営する。そのような事業は大いに評価をするべきです。
幸手市はこれから選挙が始まりますが、公約が出る前に、市民の皆さまには、幸手市の現状を観察し、幸手市に何が必要かを是非見定めていただきたいと思います。

選挙に吹く風、イメージなどに乗って大事なことを見落とすことの、市民、いや、私たちの不利益がいかに大きいかは今回の広島事件で経験したばかり。そのことを是非、多くの皆さまに共有いただければ有り難いです。

用語解説
形式収支…歳入総額から歳出総額引いた額
実質収支…形式収支から翌年度に繰り越すべき財源を差し引いた額
単年度収支…当該年度の実質収支から前年度の実質収支引いた額
実質単年度収支…単年度収支に黒字要素である積立金及び地方債の繰り上げ償還金を加え、これから赤字要素である積立金取り崩し額を差し引いた額