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汚職のコスト

2013.06.19

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汚職のコスト

 今朝、ブラジルで起きている暴動についてテレビ報道されていました。根っこにあるのは「汚職」です。ブラジルでは生活が困窮している人は増えていて、今回の暴動も公共交通の料金が10円高くなったことが起因かと言われているが、実は年間2兆円を上回る「汚職」への怒りが爆発しているのだと。あのサッカー王国のブラジルで、「ワールドカップは要らない」とデモ(今や暴動)が行われているということが国民のいらだちを象徴していますよね。

 このニュースを見て、改めてインターネットを開いて「汚職の起こる理由」と検索してみました。すると、汚職や不正が経済に与える影響はすでに経済学的も研究されており、検索にたくさんひっかかりました。本来、道義的な問題なのでしょうが、取りあえず、経済的見地から1つご紹介をしたいと思います。

「汚職の経済学」より(抜粋)
■汚職の根源は「権限の委譲」にある。公的統治が厳しい審査を受ける諸国では汚職をうまくやり、罪を逃れることは非常に厳しいが、統治と権利が脆弱な多くの発展途上国では、所有権は悪用されやすい。

■汚職のコストを計算することは難しい。というのも、汚職には秘密がつきものであり、また、汚職によって生じる歪みを計測することは困難だからである。しかし、影響があることは疑う余地もないようである。

■汚職の1つの結果は、全体の投資が減少すること。もう1つの影響は、優先すべき計画を犠牲にして、賄賂を集めやすいプロジェクトに公共支出が振り向けられるということである。そのため「不必要で金のかかる」プロジェクトが増える結果となる。

■重要なことは、汚職が公共サービスの質を低下させ、安全を脅かす可能性があるということ。また、汚職は国の再配分の役割を歪める。インフォーマルな部門を刺激し、脱税の誘因となる。

■ただ、汚職がすべての成長を損ねる「悪」とは言えない。汚職の政治的影響と経済的影響を区別することが重要。

 この論文は国際的な観点に立ったものですが、詳しいことはインターネットで調べてみてください。

 さて、現在、OECDなど先進主要国では所有権が厳しく定められており、公的統治が厳しい審査を受けるため、汚職をうまくやり、罪を逃れることは非常に難しいと論文では書いていますが、しかし、先進国や民主主義の世の中でも、非民主主義体制につながる依存主義、世襲主義、または協調組合主義という途上国的なつながりを断つことのできない地域ではそれらが起こる要素・余地が遺ることも考えられます。

 皆さまにも行政にもこれを1つの題材として、いっしょに考えていただきたいと思います。先ほどの論文にもありました。「公的統治が厳しい審査を受ける」ことで正常な統治が可能になるということを。