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米税制改革案公表
昨日の日経夕刊より
トランプ米政権は26日、大型税制改革案の基本方針を公表。連邦法人税率を35%から15%へと大幅に下げることが柱で「過去最大の減税案(ムニューシン財務長官)となる。輸出を免税して輸入を課税強化する「法人税の国境調整」は現段階で導入見送り。減税規模や財源などは公表を先送りしたため、議会との交渉が難航する恐れがある。というもの。
法人税率の引き下げはトランプ大統領の選挙公約で、今回の税制改革案公表はその実績づくりとの側面が大きく、財政規律を重視する与党・共和党と安定財源の確保を巡って議論が紛糾する可能性もある。というのですが。
【トランプ政権の税制改革案要旨】(日経まとめ)
個人
・7つの税率区分を3つ(10%、25%、35%に簡素化
・基礎控除額を2倍に
・保育・介護支出のある世帯の税負担軽減
・富裕層に恩恵をもたらしている優遇税制租の廃止
・最低代替税の撤廃
・オガマケアの財源である3.8%の純投資所得税の撤廃
法人
・法人税率を15%に引き下げ
・源泉地国課税方式を採用
・海外留保資金に1回のみ課税
法人税の減税はレーガン政権下の1986年に46%から34%に引き下げて以来、約30年ぶりの大型減税で、実現すれば、主要国で最も高かった米国の法人税率は日本やドイツなどより低くなる。
米法人税制は企業が海外で稼いだ地益にも課税する「全世界所得課税方式」を採用しているが、この改革案では、海外利益は課税対象外とする「源泉地国課税」に切り替える。日本など主要国は源泉地国課税で、米企業には「国際競争で不利だ」と不満が強かった。節税などで企業が溜め込んだ海外留保資金には「一度のみ課税する」とする。
個人税制は、最高税率を39.6%から35%に下げ、7段階ある税率構造も10%、25%。35%の3段階に簡素化。基礎控除を2倍に引き上げて低中所得層の減税幅を広げる。ただ、現段階では減税規模は不透明。
主に富裕層にかかる相続税は「廃止」、株式ねどへの譲渡益に課税する「キャピタルゲイン税」は税率を23.8%から20%に引き下げる。
ただ、減税には安定財源の確保が課題となり、財政悪化が同時に進めばドル相場を中心に金融市場が不安定にあるリスクもある。というのですが…。
”税制”はグローバル化した社会で最大の関心事ではないでしょうか。先日もブロクで書きましたが、古来、「租・調・庸」は統治そのもので、課税には「儲けは誰に帰属するか」というその国の考え方が表れる。さらに、現代のグローバル社会においては、徴税と再配分の2面的機能の適正性が、自国民だけでなく、富める国、貧しい国など国際的バランスの中で問われる。
先日もお話しいたしましたが、同じ地域に住んでいても「便利・不便」「住みやすい・住みにくい」など正反対の価値観が存在するのが「コミュニティ」であり「社会」です。トランプ大統領を選んで100日がたっても様々な思いが錯綜するアメリカ。これからは、これまでの大統領への期待感から、自分たちの実益を左右する政策の是非が問われていく局面に。
さて、債務が最低水準だとされる米国。米国の議会制度では、予算や税制はホワイトハウスではなく議会に立案と決定権があり、今回の税制改革案には財政規律を重視する議会側と意見の隔たりがあるということです。
「どこかの国がくしゃみをすればどこかの国が風邪をひく」。グローバル社会の連鎖の中で、今回の米税制改革案は私たちの生活にどのような影響として現れるのでしょうか。