2018.05.31

深谷市で返礼品に電子ポイント導入
今日はほぼリアルタイムで新聞を読んでいます。昨日の埼玉新聞。深谷市がふるさと納税の返礼品に、スマートフォンを使って市内で買い物できる電子ポイント「電子感謝券」を導入した、という記事が。
29日から「道の駅はなぞの」でポイント利用を開始。地域活性化と交流人口を増やすのが狙いで、市内各店に呼びかけて取扱い事業所を拡大するという。全国初の取り組みです。
何でも新しいことを始めるというのは準備も含め、自治体として相当な力が必要です。仮に、これがふるさと納税のポータルサイトが提案したというなら別ですが、いずれにせよ、法の網をクリアするというのはいろいろな障害は多いものと思いますので、チャレンジには敬意を表するものです。
しかし、改めて「ふるさと納税」の在り方を考えた時、この手法が運用されるとどのような影響が出るのか。税制導入当初の目的とかい離することなく初志貫徹されているか。その検証は必要です。これは地方の寄附金制度ではなく卑しくも国家の税制度です。改めてふるさと納税で検索してみました。ヒットしたネット情報の中で、メリットや賛成意見、デメリットや反対意見がまとめられていたのが分かりやすかったので少し紹介します。
【メリット・賛成意見】
①成長して生まれ故郷を離れてもその地域に貢献することができる。
②条例などで使途を限定している場合も多いため、使い道に納税者(寄付者)が関与できる。
③返礼品は地場の特産品を採用しており、地域経済の活性化につながる。
など
【デメリット・反対意見】
①行政サービスを受ける住民が税を負担する「受益者負担の原則」の観点から逸脱する。(=ふるさと納税を利用する人は利用しない人より安い納税額で居住地の住民サービスを受けられることになる)
②ふるさと納税による減収分が増税分を上回った場合、本来実施できたはずの公共サービスが実施できない事態となり、この影響はふるさと納税を行っていない居住者にも及ぶ。ふるさと納税を行った納税者は返礼品という「対価」を受け取っているのに対して、ふるさと納税を行っていない納税者は公共サービスの低下を一方的に享受せざるを得ず、不平等が生じる。
③根本的な地方活性化や地方間格差を是正するための対策になっていない。
④税収の少ない地域が受け取っている地方交付金を合わせると、人口当たりでは現状でも都市部の税収と大差がない。
⑤何をもって「ふるさと」とするかは法律で決められるものではなく、住民税で払うのは極めておかしい。税体系としてナンセンス(当時の石原都知事)
⑥納税者(寄附者)の在住する自治体ではふるさと納税の25%分の税収が減ることになる(75%分は地方交付税で補てんされる)が、地方交付税の不交付団体では補てんされることがないので、ふるさと納税分全額が減収となる。
⑦政府税制調査会会員の大学教授は、制度利用者の関心が返礼品に集中しており、財源を必要とする「自治体」への寄付となっていない。
など
上記で幸手市があてはまるのは、メリットでは③です。現在まで、幸手市では幸手産米こしひかりを返礼品としてきました。しかし、返礼品を1品でというところは、もう少し門戸を広げることも必要ではないかと、私は市に問いかけています。幸手産の他の産物にも目を向け、または、新たな産物を生み出すためには、返礼品の企画・認定基準をつくるべきだと。それこそ地方創生や活性化の本意。それによって、地域経済が活性化するなら、本当によいことだと思います。
尚、②は私は少々懐疑的です。確かに、使途を明確にして配分を公表している自治体もありますが、厳密な意味ではおカネに色は付いていない。ふるさと納税の取り扱いが特別会計でない以上、様々な政策経費として溶け込み、寄附金を特別な資金として厳密に目的事業に配分している自治体はそう多くないと思われます。
では、デメリット・反対意見から。幸手市にあてはまるのは②です。現在、幸手市は当初の勢いは失い、寄付金収入は減収の道を辿っています。現在、幸手市に入ってくる寄附金と、幸手市民が他のまちに寄付をすることで失う税収については、ほぼとんとんかそれ以下ではなかったかと。これについては後で担当課に確認をしてお知らせします。
制度については、反対意見③にあるように、そもそもこのふるさと納税は税体系としてナンセンスな部分が大きく、特に①②については同感です。そして、⑦についてはよりその傾向が強くなっているのではないでしょうか。それでも、頑なに地元産に拘りながら制度を運営している自治体(幸手市も含み)のお蔭で何とか国家の税制として品位が保たれていますが、さて、今回の深谷市の電子ポイント返礼品の真価はいかに。
反対意見⑤にあるように、今後、どのようなものが「ふるさと」として認定されポイント交換が可能となるのかによって決まってくるでしょう。何でも交換可能というなら、ただのポイントカードに過ぎません。税制と言う大きな枠組みの中で行われる行政サービスである以上、大きな視点で、世の中の秩序を保った制度運用を期待するものです。
♥さて、私は現在のところ、「ふるさと」の認定基準や認証制度を創って地道に品目拡大していく方向性を探っています。その過程(ストーリー)も含め共感をいただけるまちになりたいと考えているのですが、皆さんは幸手市も深谷方式に追従すべきとお考えでしょうか。賛成、反対のご意見をどうぞお寄せください。また、幸手市の現状は市の担当者に確認をして後でお知らせいたします。