松田まさよ6月一般質問 かんがい排水事業補助金交付の不適正な事務処理を10年以上も見過ごしてきた市の問題と再発防止策について
(1)不適正な事務処理を10年以上も見過ごしてきた最大の問題は何と考えるか伺う。
中島土地改良区に対する補助金に関しては当市においても不適正な申請を見過ごし、過大な補助金を交付してしまったこと、心よりお詫びと再発防止に万全を期して行きたい。現在、補助金事務については職員への研修やチェックリストの作成など改善策を強力に推進しているところ。10年以上見過ごしてきた最大の問題は当該補助金の事務処理については前年度の関係書類を参考にしたり、前任者からの引き継ぎを元に行っていたために結果的毎年同じような事務処理を繰り返していたと考えている。前例踏襲の形であったことが結果的に誠に不適正な事務処理に繋がったものと考える。
また、こうした事務処理の背景として、補助金の交付先が県の認可を受けた団体であり、事務処理については信頼していた点もあったのかなと思っている。今後は前例踏襲ではなく、規則や要綱を遵守すると共に事業内容の精査を徹底して確実な事務処理を行うよう進めていく。
(2)本件は、各種確認事務の不十分さ、提出書類の不備が際立つ。市の補助事業における類似の事案の有無、洗い出しは行ったか伺う。
今回のような事案が起こったことによって、市の確認事務の不十分さや補助金関係の提出書類に不備が多いと言う点で指摘を受けている。市では、規模や活動内容を始め、まさに多種多様な団体等に補助金等を交付しているが、今回のような不適切な事務処理が行われたことを真摯に反省し、今年度からは詳細なチェックリストを設けて、まず、補助金申請や実績報告の事務毎に必ず国・県補助の有無については確認をし、類似の誤りや不適切な事務処理を防止するようにした。今後は補助金交付に必要な添付書類や資料についてもさらに精査するなどして事務処理に万全を期して行きたい。
(3)本件で、ルールや手続き・マニュアルがなかったが故に起きたことは何か。ルールや手続き・マニュアル通りに行われなかったことに起因することは何か。
本件補助金においては、幸手市補助金等に関する規則及び要綱に基づき交付している。当該補助金の補助申請や実績報告に係る書類については同交付要綱に様式が定められており、補助事業者がその様式を用いて作成して市に提出するものである。様式をみると、収入の内訳として補助金額を記入する欄はあるが、その補助金の区分について市補助金と国・県補助金の欄を区分してそれぞれに記入するような様式になっていなかった。不適切な事務処理が続いた大元は職員の土地改良事業への知識不足と職務執行に係る姿勢、認識の問題と考えるがこうした様式等の不備も一因となっていた。
ルール、手続き、マニュアル通りに行われなかったこととして規則に定められている見積書や予算書等の書類が添付されていなかったこと、申請時期が事業の開始後であったことなどがあげられる。これらのことが積み重なり事業内容の精査などが十分に行われず、補助金の不適切な支出に繋がったもの。
(4)本件の、県国補助の有無確認における事務執行の不適正性と正しい確認の在り方についてどのように考えているのか伺う。
国・県補助の有無の確認においては、定められた様式による申請書に記入された内容が正しいものと思い込み、口頭での確認を行っていたものの、さらに詳しい聞き取りを行うことや予算書等の別の資料を求め確認することが欠けていたという点において不適切な事務執行が続いたもの。
事務執行の正しいあり方について、まずは規則や要綱の遵守を徹底し、厳格な運用を行い、その上で、予算書等の収入の根拠となる資料を確認するなど、より適正な事務執行に努めてまいりたい。また、補助事業者に対しても規則や要綱等の内容を十分に周知させていただき一層の理解と遵守を求めていく。さらに、申請段階において事業内容や予算について資料に基づく詳細な説明を求めることにより一層適切な事務処理を進めていく。
(5)本件では、補助要綱の周知が不十分なことが補助金交付過多に繋がった。継続して行っている補助事業で、要綱等の周知とはどのように行うべきなのか。
補助事業に係る要綱等の周知については、時期においては補助申請書が提出される以前の段階で行うことが適当と考える。その周知においては補助事業者である団体の代表者の変更があることも想定して、少なくとも年1回は実施して行きたい。周知の対象は団体の代表者、書類を作成する担当者、事務をする方として、加えて可能な限り構成員全員の方に周知されるような方策も検討していく。
また、要項等の周知だけでなく、補助申請の前には事前に補助制度の内容や申請様式の記入方法などについて相談を受ける機会も設けたいと考えている。このようなことを通して補助者である市と補助事業者の両者が要綱等の内容を十分理解できるように務めていく。なお、補助金交付は要綱等の周知だけでなく、現在進めている改善措置を引き続き進めて適正な補助金交付事務を徹底する。
(6)本件を受け、幸手市事務決済規則が改正された。決済区分を引き上げる効果を伺う。
市が交付する補助金等の決定及び決算報告書を受理する決裁権者を平成30年度より1件100万円以下の補助金については専決権者を課長から部長に、また、1件100万円を超え500万円以下の補助金については部長から副市長に変更、1件500万円以上は市長に変更するもの。専決権者が上位となることで職員一人一人に補助金事務の重要性を再認識させるとともに、担当課において根拠法令等を改めて確認し、補助金の交付基準を明確化するため、必要に応じて要綱等の見直しを行うこととした。
また、より多くの人の目で見ることで補助金の公益性・公平性・有効性の観点から提出書類等のより厳格な審査を行えることを効果と考えている。
(7)職員処分の概要を伺う(例機上の何に抵触し、処分にどの定めが適用されたか)。
中島用悪水路土地改良区への補助金の過多となる支出においては、幸手市補助金等の交付に関する規則第12条の規定により調査を実施した。その結果、補助金申請の際において補助金の対象事業の中に国・県補助事業が含まれているか否かの確認が口頭のみであり、裏付けとなる資料等の確認をしなかったことによる事務処理の不適正さが直接的な起因となったもの。また、各種規則等の運用についても一部不適正な事務処理が執行されていた。
従って、これらの不適正な事務処理について地方公務員法第33条に規定される信用失墜行為の禁止に該当する可能性もあることから、地方公務員法第29条の提要について幸手市職員分限懲戒委員会で協議をした。本事案については人事院の定める「懲戒処分の指針について」と比較しながら地方公務員法に定められる懲戒処分の軽重を協議したが、当該指針に該当するには至らない事案であったため、将来を戒める事実上の行為として訓告処分(文章による注意)にする旨決定し、平成30年3月26日に市長から関係職員3名に対して訓告処分を行ったところである。
(8)既発行「かんがい排水事業債」への本件の影響と今後の再建処理について伺う。
かんがい排水事業補助金については中島用悪水路土地改良区が返還金を平成30年3月37日に金融機関に納付したもの。補助金返還に伴ってかんがい排水事業債については繰り上げ償還が必要となる場合もあるので、借入先である市町村振興協会、埼玉県市町村課と協議をしていく。
(9)本件を機に、再発防止の強化として、要綱で指定する書類様式の見直し、例規の定期見直し、ぢょう性改革指針・大綱等の策定、行政監査要求など、組織を挙げた徹底した再発防止策を検討すべきと考えるがいかがか。
再発防止の強化としては、今年3月に主席主幹並びに主幹を対象とした研修会及び臨時部課長会議における研修を開催すると共に、事務決裁規則の一部改正の他、補助金事務処理の統一化を図るため、補助金事務処理チェックリストを新設し、指摘事項について改善報告書の様式も新たに設けた。
また、担当課においては補助金の交付基準を明確にすると共に根拠法令等を確認して、必要に応じて補助金交付に関する要綱の見直しを行うよう説明したところ。今後とも、職員一人一人が補助金交付事務の重要性を認識し、補助金の公益性・公平性・有効性の観点からより厳格な審査を行い、補助金等の適正化に努めていく所存。
(10)本件においては、不適正な事務執行に対して市長・副市長は管理監督責任をとり減給されているが、減給条例の提出と同時に、本件の問題点、すなわち、本件における管理監督責任の所在を計画にして公表すべきだったと考えるが市長の考えを伺う。
平成20年第1回定例会において追加議案として市長・副市長の給与の減額条例を提出し審議可決いただいた。議案を上程するまでの過程で同改良区補助金の調査等の結果については平成30年2月14日議員全員協議会で詳細を報告し、その直後に記者会見を開き、同様にその内容について説明した上で、市長である私の管理監督責任についても言及し事務の厳格化についても触れさせていただいた。これを受け、翌日の15日にはより詳細な減額の率と期間についても決定し記者発表をした。
従って、管理監督責任の所在を明確にした上で不適正な事務処理が問題であると判断し、市長である私と副市長の給料の減額条例を審議していただいていると考えている。
(11)市民への説明はいつ、どのように行うのか伺う。
本事案については補助金の過多となる支出という内容からその重大性を考慮し、市民から選出された議員で構成される市議会に対し報告及び審議すること、また、記者発表することの2点において迅速に市民への説明をしてきたと認識している。
2月14日の記者会見、記者発表においては、翌日の15日に、6社の新聞にその内容が掲載され、2月15日の記者発表では翌日の16日に4社の新聞に掲載された。今申し上げた内容により、市民への説明はしたと認識している。
♥最後までお読みいただきありがとうございました。本件は「過多となった申請が故意であることを客観的に示すことは困難。よって、民法上の『不当利得』があったものと考え、過去10年間に遡り不当利得分の返還を求める」との市の結論から処置が取られています。なかなか事件の立証というのは難しく、再質問の答弁でも「何らかの作為は十分感じられるが、それが補助金を多くもらおうという悪意があったかどうかを挙証するのは難しい」「これが調査の限界」との見解もありました。そのような中での再発防止策では、要綱の提出書類の様式見直しや、市民への公表については訴えのとおり実行されることとなり、また、長年訴えて続けてきた「行財改革大綱」の策定にも今年はようやく着手されているとの情報もあり、一歩前進。よかったと思っています。
さて、以前にもご報告しましたが、今回の質問の答弁として、副市長からは「どうしてこういうことが起きたか。私は組織の風土ではないかと。30年間続いてきてしまった。それがいいとか悪いではなくそれを引き継いでしまったところが風土というか文化になってしまったのではないかと考えている」との発言がありました。私は組織のリスク管理の観点や行財政改革の一環として、事務の見直し・検証がなされてこなかったことこそ最大の問題だと思っています。古くからの慣習を風土としないためにこそ、不断の改革や改善が必要なのです。幸手市がこれから取り組んでいかなければならないのは「組織の風土」への切り込みと古き慣習との決別です。今後、再発防止策への取り組みが十分な成果をあげられるかどうかです。私もさらにチェックを深めてまいります。