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隣りの芝生

2017.01.17

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和光市における超高齢社会に対応した地域包括ケアシステムの実践 ~マクロの計画策定とミクロのケアマネジメント支援~

  先日13日、幸手市役所に和光市保健福祉部長 東内京一(とうないきょういち)氏をお招きしての上記研修会がありました。

 「地域包括ケア」とは、医療・介護サービスの連携で、高齢者の地域生活を支える仕組みのことです。病床機能に応じた医療資源の投入による入院医療の強化や、在宅医療の充実など地域包括ケアシステムを構築することで、「どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会にしていく」ことがこの仕組みの最大の目的です。

 今回は先進自治体の和光市の保健福祉部長の職にある東内氏にお越しいただき、マクロの観点から、ミクロの観点から様々な示唆に富んだお話を聞かせていただきました。

 2025年の高齢社会を踏まえると、
 ①高齢者の生活課題の増大
 ②単独世帯の増大
 ③認知症を有する者の増大 が想定されます。

 介護保険サービス、医療保険サービスのみならず、見守りなどの様々な生活支援や青年貢献等の権利擁護、住居の保証、低所得者への支援など、様々な支援が切れ目なく提供されることが必要となります。

 現状ではそれぞれの提供システムは分断され、有機的連携が見られない。そこで、地域において包括的、継続的につないでいく仕組み「地域包括ケアシステム」が必要となるのです。

 元気な高齢者を増やすこと、そして、介護4でも5でも在宅で暮らすことができることを目指します。介護度を下げることが目的ではなく、高齢者の生活機能の向上をめざし、さらに、それによって介護保険料の月額基準額の上昇を食い止めます。

 お話を聞いて、まず驚いたのは東内氏の仕事に掛けるパッションです。困難はあって当たり前。それをいかにクリアしていくか。また、過去には和光市長のリーダーシップにも負うところが大きかったような感じですね。
 
 私の母も義母も、幸手市ではありませんが介護保険サービスによって支えられて生活しています。人生の最後までその人らしく生活をしていける、そんな温かな地域は、地域の仕組みを厳しく管理する人たちによって支えられていることを再認識した研修会でした。

 和光市は財政力指数1を達成する自治体です。面積こそ小さくても人口密度も高く、東京と隣接する中で、非常に厳しい競争にもさらされているものと思われます。 ”隣の芝生は青く見える”の類ではありません。本当に管理の行き届いた庭の美しさと職人技に脱帽。選ばれる自治体となるには何が必要か。考えさせられる研修会でした。

親子で考える終活について@幸手市消費生活展

2016.12.08

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終活は「意思」をはっきりとさせる

 近年。「終活」(しゅうかつ)という言葉が市民権を得て、多くの皆さまがその必要性をお感じになっておられるものと思います。人生いろいろ、様々な関係性の中で必ず誰にも訪れる『最期』の時をどのように迎えるか。先日、幸手市くらしの会と市の共催による「消費生活展」において、一般社団法人終活コンシェルジュ(主に弁護士、税理士などで構成)から講師を招いての講演がありましたので、いくつか資料を抜粋して皆さまにもお伝えしたいと思います。

■「終活」とは =一言でいえばリスク管理
 ①「意思」をはっきりとさせる
 ②子供は親の「これからの問題」に備える
 ③親は子供に「これからの準備」を伝える
 そのために、最悪を想定して最善を尽くす ことが大事。

■親子で把握する問題とは何か
 ①介護の問題
  高齢化問題を数字から把握すると、
 ・75歳以上になると要介護認定を受ける人が急増
 ・要介護4・5の高齢者の半分近くが在宅介護サービスの利用者に
 ・要介護3以上は誰かの手助けが必要
 ・主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者
 ・家族の介護・看護のため離職・転職する人は女性が多い
 ・男女ともに50代及び60代の離職・転職が転職者の6割強を占める
 (50代で離職=たいへん。給料=半分以下に)
 ・要介護4以上では同居の主な介護者の約半分がほとんど終日介護
 ⇒介護疲れで家族共倒れしないように
 ★介護サービスの積極的な利用・老人ホームへの入所等を今のうちから
  考える(特養…入りにくい、有老…20~30万円/埼玉県)
     (年金…12万円程度、国保5万円程度?)
     (要介護3→ケアマネ対応→限界→家に置けない→
           ディサービスのお泊り=グレーな対応→
           行政は動かない       
 ★年金、貯金、試算等お金を再確認する
②認知症の問題
 ・認知症を有する高齢者人口は増加の一途 
 (2020年には高齢者の1/4=292万人が出現すると推測)
 ⇒認知症は換地はできないが予防はできる
 ★軽度の状態で治療を受ける
③入院・治療の問題
 ・終の棲家の80%近くが病院である
 ・死亡場所は日本は病院が圧倒的に多い
 ⇒看取りのできる老人ホーム=良い施設
④葬儀・埋葬の問題
 ・葬儀はどうするのか
 ・宗派は把握しているのか
 ・墓はどうするのか
 ⇒代々の墓が遠方の場合、移転したいなどは意思表示しておくべき
 ⇒墓を守るのは誰か。子どもたちと話し合いを
⑤相続が争続となる問題
 ・遺産分割事件の新受件数{調停・審判は過去20年間で5倍超増加
 ・相続額300万円(持ち家1軒+金融資産)が一番争いやすい
 ・遺言公正証書年間登録数 平成26年には10万4490件
 ⇒「遺言書」の作成
⑥空き家の問題
 ・平成25年の空き家数は約820万戸。空き家率13.5%
 ・高齢親族のいる一般世帯、ひとり暮らし高齢者、高齢夫婦世帯
   =持ち家率が高い
⑦家族史が承継されない問題
 ・二世代、三世代同居の世帯は減少傾向にある
 ・50差う時点で一度も結婚したことのない(生涯未婚率)男性は
   4人に1人
 ・家族が離れていると話し合いができない=伝承されない
 ⇒記憶を紡ぐ = 意図的にでも家族で話し合う

■結論 自分らしい「終活」、大切な人のための「終活」とは。
 1.紡ぐ
 2.「備えること」は大切な人への思いやり
     …自分の老いを求め備えていく
 3.「伝えること」は大切な人への思いやり
     …孫、その下の世代へ「あの人がいた」=存在が語り継がれる

いろいろ書きましたが、とにかく子どもたちと話し合って、老いの現実を共有し、リスク管理をしていく。ということのようです。お正月も近くなりました。年末年始はご家族が一堂に会される機会もあることでしょう。お子さまや親御さんとのお話し合いにご参考になりましたら幸いです。

溜まりに溜まったものを一挙に

2016.02.11

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図書館流通センター「新座ブックナリー」見学会

 何本も一挙に”放出”してスミマセン。このところ、いろいろな提出物に押されてブログの更新が滞っておりましたが、お伝えしたいことが溜まりに溜まって、皆さま(お読みくださる方)に配慮することなく”放出”させていただいています。どうか少しずつお読みくださいませ(笑)。

 さて、表題の見学会は、現在幸手市立図書館の指定管理者である株)図書館流通センター(TRC)が主催するものでした。去る8日に図書館で活動しているグループや図書館のパート職員さんたちと行ってきました。私も図書館で活動しているメンバーの一員として参加。

 さて、この新座ブックナリーについて。ワインの物流・加工拠点を示すワイナリーという言葉は知っていても「ブックナリー」という言葉は聞きなれないという方もあられると思います。「ブックナリー」とは、本の物流と図書館用に本を加工する拠点という意味です。もともと本屋から始まったというこの会社は現在、自治体立の図書館や学校図書館などに本を販売するほか、幸手市のように全国の多くの図書館の指定管理などを請け負っています。北は北海道から南は九州、沖縄まで全国からの注文受付・装備・配送を手掛ける拠点であり、最大の物流拠点流であるこのブックナリーでは、常時120万冊の図書を流通させているということでありました。

 業務の内容等はインターネットでも検索できますので、ご興味のある方は是非検索してみてください。ここでは、私がこの見学会で質問をしたり、感じたことをいくつか書いてみたいと思います。

 まず、始めに。ブックナリーがまちなかにあることに驚きました。てっきり、工業団地のようなところにあると予想していたので。帯同の幸手市立図書館長に聞くと繁忙時にはマックス500人の従業員が働く工場で、その従業者のほとんどがパートタイムの若い子育てママたちだとか。「若い働き手を確保するために市内に工場が作られている」とのことでした。確かに、駐輪場にひしめくように置かれた子ども用補助いすのついたママチャリ群が、若いママたちの職場であることを物語っていましたよ(笑)。

 若いママたちを戦力とするには働きやすさと工場の立地は大事ですね。しかし、根気と体力と手先の器用さを求められる職場であり、印刷のニオイ(本好きには”香り””匂い”)も含め、本好きでなければ勤まりません。しかも500人を集めるというのは相当なことですよ。そんな高いハードルをクリアしたのが「新座」であり、この地であったとの説明でした。
 また、配送される大小、形態もさまざまな本を「装美」する工程は、機械と人手で行いますが、本当に忍耐とスピード、丁寧さと熟練が必要な工程です。今度、図書館に行かれた時に見てください。TRCでは図書館に本を卸すときは必ず「装美」といって、ビニールのカバーをかけるそうです。この工程はかなりな人手を要するのですが、TRCでは別料金をいただかず、「サービス」として定価のなかで人件費や材料費などの費用を捻出しているとのこと。正に民間の経営努力を感じました。

 また、本の売れ残りは企業利益を損ねます。TRCでは「目利き」の部署があって、出版社への返品が極力抑えられるような購入努力が払われているそうです。このような事業者に幸手市は今、図書館管理を委ねています。「企業秘密はない」とのお墨付きでいくつか写真を撮ってきましたのでアップします。

さて、今回の見学会は幸手ICから高速道路を使って新座までバスで行きました。渋滞が無かったこともあったのですが、さすがに圏央道。帯同した図書館長が「いや~、幸手は圏央道ができて便利になりましたね~」と感嘆していました。そんな館長のひと言から、幸手市の持つポテンシャルを新ためて感じる機会となりました。幸手市の産業団地も雇用を含め今後どのようになっていくのか。楽しみですね。

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工場で働く人たち 他にも仕分けや書架の管理、配送など多くの人が

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工場の中にはベルトコンベアーが。「装美」の機械は複雑な仕様です。

 

治水を学ぶ3 大島新田調節池

2016.01.18

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大島新田調節池の越流堤

 さて、首都圏外郭放水路を見学した後、大島新田調節池の「越流堤」の見学をいたしました。

 「越流堤」とは、洪水調節の目的で堤防の一部を低くし、越流堤の高さを超える洪水では、洪水の一部を流し込む・流し出す構造になっています。大島新田調節池の場合、幸手市(倉松川)から大島新田に流し込む分流地点と、大島新田調節池に溜まった水の排水地点に越流堤が設けられています。
 この2つの越流堤の本来構造では、流入部と排水部の越水堤は同じ高さに設計されているのですが、今、排水部の越水堤が地盤沈下の影響か、流入部より低くなってしまい、大雨時に逆に排水を受けるべき河川から越流堤を越えて流入が起きる現象が確認されています。
 先日の意見書の中では、直言はしていませんがこの堤防の改修・改善も視野に入れて要望しています。県は大島新田調整池の下流地域との調整を図りながら対応していくとしています。以下、大島新田調節池の写真です(写真の上でクリックすると拡大できます)。

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流入部、奥に見える倉松川からの分流地点と越流堤

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出水部、越流堤と、大島新田からの出水口と研修会に参加したメンバー

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冬の大島新田調節池 です。


 
 

治水を学ぶ2 地下の”パルテノン神殿”

2016.01.17

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首都圏の安全・安心を守り続ける巨大地下放水路 

 さて、午前中の県政出前講座の後、午後は春日部市にある『首都圏外郭放水路』の見学へ。
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 大雨のたびに浸水被害を繰り返してきた中川・綾瀬川流域。県政出前講座でも話がありましたが、私たちが住んでいる地域は、地盤が低く、水が溜まりやすい「皿」のような低平地で、急速に都市化が進展した地域です。
 洪水被害を防ぐための河道整備や下水道整備が追いつかず、今後さらに都市化が進めば、過去とは比較できないほど甚大な被害を受ける恐れがあります。
 そこで水害から地域を守るため、地域全体が一丸となって水害に強い街づくりを目指す「中川・綾瀬川総合治水対策」の大きな柱として期待され、整備されたのが『首都圏外郭放水路』なのです。

ファイル 733-1.jpg 国道16号線の地底50mを流れる全長6.3㎞にもおよぶ世界最大級の地下放水路で、庄和排水機場に設置された第1立坑(たてこう)から東京湾に向かって左(西)に4つの河川に立坑が掘られています。その立坑に設置された取水口から雨水を取り込みます。
 全体のイメージとしては、一番西端の大落古利根川(第5立坑)-幸松川(第4立坑)-倉松川・中川(第3立坑)-第18号水路(第2立坑)-庄和排水機場内にある第1立坑⇒江戸川に排水 となります。5つの立坑のうち、倉松川の第3立坑が一番取水量が多く設定されています。中川からは最大毎秒25?を、倉松川からは最大毎秒100?を取り込みます。

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さて、左写真の左のコンクリート施設が地下への入り口。芝生の奥はサッカー場で市民に貸し出しされています。右の写真、地下調整水槽には100段の階段を降ります。
 首都圏外郭放水路は、日本が世界に誇る最先端の土木技術を結集し、平成5年3月に工事に着工、およそ13年の歳月をかけて平成18年6月完成した”地下の川です。地下の調圧水槽ははまるで巨大な”地下神殿”のようです。長さ177m、幅78m、高さ18mで、重さ50tの大きな柱59本が天井を支えます。地下神殿の”パルテノンぶり”が皆さまにお伝えできているでしょうか?

 ちなみに、この施設の心臓の操作室は円卓が宇宙的?未来的?なフォルムを持つことから、「ウルトラマン」の撮影に使われたとか。確かに強さとは美しさを兼ね備えてこそ、と思わせる美しい操作室でした。
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