2023.02.01

防衛省が世論工作の研究に着手?
2月になりましたね。寒い日が続きますが春は少しずつ近くなって。しかし、春の訪れを喜ぶ前に、日本全国、今年もスギ花粉の洗礼が待ち受けていて。皆さまにはお気をつけくださいませませ。さて、今更ですが、昨年12月18日の埼玉新聞。防衛省が世論工作の研究に着手したというスギ花粉より怖い記事から一つ。
この記事、15面にさらりと静かに発信されていますが皆さまにはお気づきでしたか?
この記事の内容が国会で議論されたという記憶もないし、野党の方が問題視したというニュースも私は気付かなかったのですが。静かなことが怖い。情報が溢れる現代を生きる私たちがいずれにせよ、身構えるべき記事かと。そのようなことで、以下、一部転記いたします。
「防衛省が人工知能技術(AI)を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成。国民の反戦・厭戦の気運を払拭したりするネット空間でのトレンド作りを目標としている。
防衛省が姿を消したまま世論誘導を図るのは、一般の投稿を装い宣伝する「ストレスマーケティング」の手法と重なる。同省は、企業のコマーシャル技術と同じで違法性は無いと説明するが、研究であったとしても憲法が保障する個人の尊重(13条)や思想・良心の自由(19条)に抵触する懸念があり、丁寧な説明が求められる。
中国やロシアなどは、人間心理の操作やかく乱を図る情報戦に活発に取り組む。防衛省は、戦闘形態を一変させるゲームチェンジャーになると見て日本もこの分野の能力獲得が必要だと判断した。
……複数の政府関係者によると、防衛省が構想する世論操作は、まずAI技術を駆使してSNSに溢れる大量のビックデータを収集・分析し、どのような対象に工作をするのがふさわしいかなどの全体計画を策定。ネットで発信力があり、防衛問題でも影響力がありそうなインフルエンサーを特定する。さらに、インフルエンサーが頻繁に閲覧するSNSやサイトに防衛省側の情報を流しインフルエンサーが無意識に有利な情報を出すよう仕向けるという。防衛省が望むトレンドができれば、爆発的な広がりになるようSNSで情報操作を繰り返す。
9月に委託事業公募の入札を実施。10月に世界展開するコンサルタント会社の日本法人に決定した。この会社は米軍の情報戦活動にも携わる。研究は23年度以降も3年ほど続ける。」
♥いかがですか。防衛省が言うように情報は戦略です。そして、情報戦は古今東西、権力者により行われて来た"手垢のついた"権力掌握の常套手段です。今に始まったものではありませんが、誰でもが発信手段を持てる現在、戦略の鉾先は個人にも及ぶ。確かに、インフルエンサーが他の世論に毒される前に毒をもって制するという防衛省の危機感も国益上一定の理解はできますが、半面、人の無意識を操作するステルスマーケティングと同等とは思えない一線を越えるアブナイ橋です。人知れず、"洗脳されやすいヒト"との烙印を押されて気が付かないインフルエンサーも哀れですが、どんなインフルエンサーが狙われるのか。
そして、今回の研究は国家が自国民に向けて実行され、しかも、外国軍の情報戦活動の傘下にある法人が請け負う構図。これはアブナイ兆候のように思えてなりません。その点で、最近気になっているのは、テレビで連日連夜、同じ専門家による同じ色調の情報がいたる局から発せられるウクライナ情勢報道です。日本のメディアは既に乗っ取られている?不気味です。
私は、ロシアの力による現状変更は断固容認するものではなく、武器供与より即時停戦こそあるべきとの立場ですが、各国の思惑が渦巻く中、連日繰り返される情報戦に毒されないために、見る側の、情報を受け取る側の情報リテラシーや判断力が益々必要となっていることを強く感じます。
♥♥さて、この記事は共同通信専任編集委員の記名記事です。一応、物書きの端くれにいる者として、この記事にも印象操作が含まれていると私は感じます。それが共同通信社の意図なのか、埼玉新聞の主張なのか、さらにもっと大きな勢力の戦略の下にあるのか。記事は、自国国民を対象とする世論工作が公然と入札され、アメリカ軍の情報戦の配下に与する法人が落札したこと、そして、良し悪しは別として、私にしたら機密に近いと感じる防衛省の構想をいとも簡単に漏らす複数の政府関係者、などなど。丁寧な説明というレベルではない怖さを感じるのは私だけでしょうか。
♥♥♥では、このような戦略に毒されない処方箋とは。残念ながら、インターネットの世の中は後戻りはできません。何度も繰り返しになりますが、国民が情報戦に毒されない賢い判断力を身につけて行く。情報リテラシーを向上させるしかない。これは本気で取り組まなければならないことです。取り越し苦労?私の杞憂でしょうか。皆さまはいかがお感じですか?