記事一覧

考察 最低賃金引き上げ

2016.07.28

アイコン

政府、過去最大 中小向け助成金拡充

 27日、日経夕刊より(抜粋)

 厚労省の中央最低賃金審議会の小委員会は26日、2016年度の最低賃金を全国平均で自給24円引き上げ、825円にする目安を決めた。引き上げ率は3.0%で、厚労省は中小企業の賃上げを支援するための助成金を拡充する方針。第2次安倍内閣発足以降の4年間で70円以上上がった。
 引き上げ幅の目安は都道府県を経済状況などに応じてA~Dの4つの分類に分けて示す。東京、神奈川、大阪などA地域は25円。埼玉や京都などB地域は24円。北海道や新潟などC地域は22円。高知などのD地域は21円上がる。
 目安通りに上がれば、最も高い東京は932円、最も低い鳥取、高知などは714円になる。最低賃金の引き上げは中小企業にとって負担が大きいため、国は支援に乗り出す。生産性の向上につながる設備や機器の導入費用の一部を補助する厚労省の業務改善助成金は、時給800円未満の労業者の賃金を60円以上引き上げることが支給条件となっている、と。

 最低輪銀が上がることは被雇用者にとってとても有難いことです。しかし、そのために政府がそれを支援=助成金を用意しないと実現しないというのは、財政的ピンチにある日本における政策として正しいのかよくわかりません。安倍政権はGDPを上げる=国民の消費を喚起することに注力しているのはわかります。しかし、この政策の成果として恩恵を受けるのはどのような働き方をしている人たちなのか。

 例えば、公務員の給与は人事院勧告によって定められていますが、平成28年4月1日現在の幸手市一般職の平均給料月額(平均年齢39.07歳)は303,489円で、ひと月25日、1日8時間で単純に割ると時給は1517円(年額給与はさらに高くなります。ちなみに、大卒一般職初任給料月額は時給換算915円です)。更に、すでに福利厚生が充実している方たちにも最低賃金の増減はほとんど影響はないと考えられます。
 一方、非正規雇用者やアルバイトやパートの場合、時給は収入に大きく影響しますが、103万円の壁を意識する人たちのなかには、時給があがれば⇒壁に抵触⇒勤務時間を減らす、という選択をしてする方もいるでしょう。仮にそのような選択をする方が多ければ、時間給は上がっても給料は増えない。
 また、130万円の壁に関しては、雇用者の社会保障費の増大につながるため、勤務時間の調整がなされる可能性はないのか。更に、賃金が増える分、雇用者を減らして調整=仕事量のブラック企業化を深刻化させてしまうケースはないのか。だから補助金の支援ということにつながるのかとは思いますが、所得が多少上がって課税区分が上がってしまう方はいないのか。様々な影響が考えられる中で、一体どのような方にどのような恩恵が及ぶのか。

 今、安倍政権が多くの税金を投入するのは、地方の地力=国民の消費の喚起のためです。しかし、地方創生交付金しかり、地方活性化も個人の消費マインドを温めるまでには至っていない。そもそも、高齢化というのはおカネを使わないということに繋がっており、消費を喚起してもなかなか産業振興にまで及ぶのは難しい地域も多いものと思われます。一部、ふるさと納税のように、”うまく”活用して地域産業を振興させている地域もありますが(あの仕組み、私は???です)。
 税金を投入して効果を上げたい⇒効果が上がらない⇒更に税金を投入する。これには限界があると感じます。「時給アップ」は単純には有難いことですが、投入した国の”支援”が、消費マインドを上げたいという政府の思惑に合致する施策となり、月給が上がって純粋に喜べる人が増える政策となることを望むばかりです。

 そこで、私は1つの提案として、今こそ、社会保障費の企業負担という社会モデルを再考察してみるべきではないかと思っています。確かに、世界の情勢は混とんとし、前例のない新たな局面がどんどん起きている現在、この局面に少なくとも日本を停滞させないために、安倍首相は本当によく頑張っておられると思いますし、批判するのは易しです。しかし、日本は、若干、あらゆる政策・規制を通して国の関与が行き過ぎてきたのではないかとも感じます。特に社会保障費に関しては国の制度や仕組み、社会があまりに複雑になり過ぎています。
 しかし、しかし、昨日も取り上げましたが、矢継ぎ早に創設される地方創生交付金に見るように、地方がその国から放たれる矢のスピードについていけていないのが現状では。交付金や補助金頼りでは本当に自立的で特徴のある政治・自治や地方の活性化はできないことも、そろそろ認めないといけないのかも知れません。

 ハリボテではなく、根本を見直す。その1つとして社会保障費を国と企業が折半で担う制度を見直すというのはどうでしょう。企業の社会保障費の負担を解く代わりに、儲けは税金と従業員の給与にしっかりと反映させることが条件であり、政府によるセーフティーネットの構築といつでも再チャレンジできる仕組みも必要です。雇用が流動化し、様々な生き方が可能になった今、企業が社会保障費に縛られて雇用調整するようなことがあっては国民のマインドも消費行動も喚起できず、活力のエンジンが回らない。ヒトを地域で十分活用できる環境づくりこそ究極の政策ではないかと。
 どんなに最適解を目指しても何をやっても様々な影響が出ることは否めません。充分な考察は必要です。経済学や社会学などの学者先生には見識を疑われるような発想かもしれませんが、生活者の実感として、新しい社会のモデルの1つとして一考の価値あり。そのように感じます。

 皆さまはどうお考えですか?このような分野に見識の深い方がいらっしゃいましたら、考え方をご教授ください。

 ♥財布のヒモの解き具合はいずれにせよ、
    幸手市の皆さまには地元にご贔屓のお店を見つけて、
    是非、地元でお買い物を!!