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戦争をどう伝えるか
先日来、被爆体験を基に書かれた漫画「はだしのゲン」を小中学校の図書室で自由に閲覧できないようにしたとして、松山市教育委員会の判断の是非が話題になっています。メディアには、戦争の恐ろしさや平和の尊さを学ぶ「知る権利」と「表現の自由」の観点から、”行き過ぎた規制”との論調が多いようです。
ことの経緯は、松山市議会に昨年8月、1人の市民(立場や世代などは不明ですが)から本書に対して「誤った歴史認識を子どもに植え付ける」と学校の図書室から撤去を求める陳情があったことが発端。市議会は議論の末、陳情を不採択としたが、独自に調査した市教委は「過激なシーンがある」として小中学生が自由に持ち出して読むのは適切ではないと判断。昨年12月、本書を書庫に収める閉架措置を取るよう校長会で求めたというもの。ただ、松山市教委は、作品が平和教育の重要な教材であること自体は認め、教員の指導で授業に使うことに問題はないと説明してるということ。
さて、この一件、皆さまはどうお考えになりますか。私は地元ボランティアとして「戦争体験者の語り部活動」で小学校を訪れることがあります。先生方と打ち合わせをして、子どもたちが咀嚼できる範囲を設定しますが、生々しい表現だけが悲惨さを伝えるということではないと考え、「今の我々世代が理解できる言葉に変換しながら体験者が伝えたい本質が伝わる」よう心がけています。祖父母世代が戦争体験をしていない世代が親であり先生である時代となり、現代の感覚からは想像を絶する戦争をどう子どもたちに伝えるかは一番苦慮するところです。
今回の松山市の件から我々が考えなければならないことは、戦争を知らない世代が親や先生となり、「地域で、戦争の本質をだれが、いつ、どう伝え継ぐのか」という時代性を帯びた問いかけだと思います。専門家や知識人の中でも評価が割れる戦争をどう伝えていくのかは戦後日本の課題でもあります。
さて、幸手市でも毎年、終戦日前後に本庁舎ロビーで戦争時の写真展を開催していますがご存知ですか。兵隊さんを幸手駅に見送りに行く姿や、家族との記念写真、町のお寺に学童疎開してきた子どもたちの様子、戦地の様子などの写真が飾られます。
戦争の時代は遠くなりました。3世代、4世代と戦争を知らない子どもたちを輩出していることは日本の誇りです。しかし、それは反面、戦後68年が経ち、「戦争の証言」を集められるのは今しかないということ。幸手市でも戦争体験談の収集活動が事業化できればいいのですが。